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2000/08/11 日本銀行政策委員会金融政策決定会合議事録(抄)

議事録
 

2000年の0金利解除の際の議事録(抄)自分用メモ

 

 

速水議長 それでは8月の金融政策決定会合を開催する。

 

(午前9時1分開会)

 

-略-

 

本日の政府からのご出席は、大蔵省から村田総括政務次官経済企画庁から河出調整局長が出席している。

予めお断りしておくが、会合の中で出された意見、発言は全て記録することを前提とする約束なので、委員および政府からの出席者におかれては、そのことを前提に発言頂くよう宜しくお願いする。

 

-略-

 

速水議長 他にあるか。それではここで午前中の討議を終わり、12時50分に再開する。

 

(午後0時15分中断、午後0時53分再開〉

 

速水議長 それでは午後の討議に移りたいと思う。

 

三木委員 議長に提案がある。昨日の朝の各新開や今朝の新聞に、あたかも本日会合でのゼロ金利解除が既に決まっているかのような報道がなされている。 (後略)

 

-略-

 

速水議長 特に他にご意見がなければ議案の取り纏めに入る。その前に政府から出席された方々にもしご意見ございましたらどうぞ。

 

村田大蔵総括政務次官 本日自の金融政策決定会合に当たり、一言申し述べる 。わが国の景気は、緩やかな改善が続いているが、完全失業率が高水準で推移するなど、雇用情勢は依然として厳しく、個人消費も概ね横這い状態となっている。設備投資についても、足許持ち直しの動きが明確になってきてはいるものの、業種や規模によるバラツキが依然存在するなど、その持続性や広がりについてなお見極めが必要である。(中略)日本銀行におかれては、政府による諸施策の実施と併せ経済の回復を確実なものとするため、金融為替市場の動向も注視しつつ、豊富で弾力的な資金供給を行なうなど、現行の金融市場調節方針を継続して頂きたいと考えている。政策委員各位におかれては、ご審議に当たり以上申し述べた政府の経済・財政運営の考え方等につき、ご理解を賜りますようお願い申し上げる。

 

河出経済企画庁調整局長 (前略)従って、経済の現状を考えると引き続き景気回復に軸足を置いた機動的、弾力的な経済・財政運営の継続が必要である。日本銀行におかれては、金融為替市場の動向も注視しつつ、豊富でかつ状況に応じて弾力的な資金供給を行なうなど、引き続き景気回復に寄与するような金融政策を運営して頂きたいと考えており、現時点でゼロ金利政策を解除することについては時期尚早と考えている。以上である。

 

速水議長 ただ今のご発言は参考意見としてお伺いして宜しいか。それとも政府として正式に日銀法第19条第2項に規定している議決延期を求めておられるのか。

 

村田大蔵総括政務次官 参考意見である。

 

河出経済企画庁調整局長 議長、議案の提出がありましたら大蔵省代表とも相談をしたいと思っているので、中断をお願いしたいと思う。

 

速水議長 それでは議案の取り纏めに移りたいと思う。これまでの委員による検討によれば、ゼロ金利政策を解除して当面の金融市場調節方針についてコールレートを 0.25 % 前後で推移させるというご意見が多数を占めていたように思う。そこで私の方からはその趣旨の議案を提出したいと思う。これとは異なるご意見の方で、ここで正式に議案として提出されたい方がいればどうぞ、お願いする。

 

[中原委員が議案提出を表明]

 

政府から議決延期の求めをするという意思表示をされるのでしょうか。

 

村田大蔵総括政務次官 本日の会議の審議の状況を伺うにつき、ゼロ金利政策を解除する議長の議案が議長によって取り纏められるということであるが、私大蔵省の総括政務次官および経済企画庁調整局長は、日本銀行法第19条第2項に基づき本日の日本銀行政策委員会金融政策決定会合において、議決延期請求権を行使する必要性などについて、両省の間で協議し、また必要に応じて大蔵大臣および経済企画庁長官と連絡を取りたいと考えているので、私共が協議を終えるまで会議を一時中断して頂きたいと思う。会議が一時中断されている間に両省の間で議決延期請求権を行使する必要性などについて協議が成立した場合には、速やかに会議の再開をお願いする。

 

速水議長 承知した。ただ議決延期の対象となる議長案の文面がまだ確定していないので、文面が固まったところで、改めて確認したいと思う。事務局は中原委員と私の議案を配って読み上げて下さい。読み上げの後議案の説明をする。

 

〔事務局より議案配付]

 

雨宮企画室企画第 1課長 まず中原委員案である。

 

「金融市場調節方針の決定に関する件。案件。

 

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。対外公表文は別途決定する。

 

記。

 

中期的な物価安定目標として2002年10月~12月期平均のCPI(除く生鮮〉の前年同期比が0.5~2.0%となることを企図して、次回決定会合までの当座預金残高を平残ベースで7兆円程度にまで引上げ、その後も継続的に増額していくことにより、2001年1~3月期のマネタリーベース(平残)が前年同期比で15%程度に上昇するよう量的緩和 (マネタリーベースの拡大)を図る。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記マネタリーベースの目標等にかかわらず、それに対応して十分な資金供給を行う。以上。」

 

である。

 

次に議長案である。

 

「金融市場競節方針の決定に関する件。案件。

 

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。対外公表文は別途決定する。

 

記。

 

無担保コールレート(オーバーナイト物〉を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。以上。」

 

である。

 

-略-

 

中原委員 提案理由は毎回申し上げているとおりであるが、もう一度繰り返して申し上げると、第一の理由はGDPギャップが依然として大きいことである。(後略)

 

 

-略-

 

 

速水議長 私は第4条の整合性はとれていると思う。あらゆるレベルで連絡をとり合い、話し合ったりしている。私も話はしてきた。それに対して中央銀行の立場で通貨および金融の調節における政策の決定の自主性は尊重されなければならないという第3条の条項に基づいて決定したいと思う訳である。先程政府の方から議決延期の求めに関する検討を行ないたいとの意思表示が出ているので、10分間休憩とする。

 

(午後2時51分中断、3時10分再開)

 

速水議長 それでは、再開する。政府の方から正式に議決延期の求めを出すのかどうか。

 

村田大蔵総括政務次官 会議を一時中断して頂いたが、その間私共は日本銀行法第19条第2項に基づき、議決延期請求権を行使する必要性などについて協議を行ない、その結果協議が成立したのでここに会議を再開して頂くよう要請する。本日の会議における各委員の議論や提案された議案等を踏まえ、両者の間で協議を行なった結果、わが国経済の現状や市場の動向等に鑑みれば、現時点におけるゼ口金利政策の解除は時機尚早と思われることから、私大蔵省総括政務次官および経済企画庁調整局長は、ここに本日の日本銀行政策委員会金融政策決定会合において、議長により取り纏められた議案の採決を次回の金融政策決定会合まで延期して頂くよう求めたいと思う。以上である。

 

速水議長 それでは、議決延期の請求を出されるようであるので、政府からの議決延期の求めについて、皆さんで討議をして頂きたいと思う。そして最後に各々の議案について採決するということで取り進めたい。執行部は政府から提出された議決延期の求めを配って読み上げて下さい。

 

[事務局より政府からの議決延期の求めを配付] 

 

それでは読み上げて下さい。

 

雨宮企画室企画第1課長 大蔵省村田総括政務次官経済企画庁河出調整局長提出分。

 

日本銀行法第19条第2項の規定による議決の延期の求めに関する件。案件。

 

日本銀行法第19条第2項の規定に基づき、議長提出の『金融市場調節方針の決定に関する件』(平成12年8月11日付政委第117号)に係る政策委員会の議決を次回金融政策決定会合まで延期すること。」 。以上である。

 

速水議長 これについて何かご説明を求められる方はおられるか。いないようなので、この請求について皆様からご意見、ご議論を自由にご発言頂きたいと思う。どなたからでもどうぞ。

 

中原委員 議事の進行はどのようになるのか。

 

増渕理事 議事について私から簡単に申し上げる。この政府からのご提案について委員方でのご議論が尽くされたところで他の議案を含めた採決に移って頂く。つまり政府のご提案についてのご議論があって、その後政府の案を含めた三つの議案のうちまず政府案について可否の決定があり、その決定の如何にもよるが、その後中原委員案と議長案について採決することになる。取り敢えずこの場で政府案についてのご意見、ご議論があればそれについて討議して頂く。

 

中原委員 採決は どの順で行なうのか。

 

増渕理事 採決はまず政府の議決延期の求めについてその採否を決定して頂く。

 

中原委員 私の案と混乱するがどうなっているのか。

 

増渕理事 採否で延期が可決となれば議長案の採決は延期となる。もし延期の決定が否決されれば中原委員案と議長案の採決が行なわれる。

 

中原委員 了解。

 

-略-

 

山口副総裁 先程河出経済企画庁調整局長は下方リスクの例をつ幾か挙げられたと思うが、もう一度言って頂けないか。

 

河出経済企画庁議整局長  先程の意見の時にも申し上げたが、アメリカの株価の先行きについて不透明感があるとみている。これも程度問題であろうがこれまで急角度で回復してきたアジア経済に一服感がみられる。それからこれまでの景気の下支え要因であった公共投資について補正予算をどうするかという議論も あるが、現在の政策のままだとかなり減衰しつつあるとみている。それから不良債権処理問題の影響が必ずしも今の段階で十分見極めがたいといったような下方リスク・下押し要因があるのではないかとみている。そういった意味でより慎重な対応が現時点では必要ではないかと考えている。

 

-略-

 

速水議長 他にご討議頂くことはあるか。

 

中原委員 私は議決延期請求は重大な事態だと思っている。(中略) 本題に入ると、日銀法の第4条に規定されているとおり日本銀行は日頃から政府と緊密な意思疎通を図るべきであるが、どうも先週から今週にかけて国会の予算委員会や、月例経済閣僚会議において色々やり取りがあったようでそれがマスコミの報道を通してみると、挑発的な言辞ともなってみたりして、エスカレートしていった感があり、私としては極めて遺憾である。これまでG7においても政府と日本銀行との関係はどうなっているのかと海外から色々批判めいたものが出た訳であるが、このようにエスカレートした中で議長案の採決を強行することになると海外の当局や市場関係者から日銀を含めた日本の政策当局への不信を決定的なものにして、今後の政策運営に禍根を残すのではないかと思う。(中略) 四番目に、本件は議決延期要求が出たことによって、今後の金融政策、日本銀行の将来の在り方について極めて重大な問題を投げかけたと思う。日本銀行が独立性を獲得してまだ2年余りで、それも色々な偶然的な事由もあって手に入ったが、今は戦後日本が民主主義を手に入れたのと全く同じで、オールド・ブンデスパンク的な独立性ではなく日本の議会制民主主義の中でどのようにして日銀の独立性があるべきか今回は問題を投げかけたのではないかと思う。然るべき冷却期間を設けるのが適当であると存ずる。それから最後に日本銀行は日銀法の中で活動している訳で、政府は議会制民主主義の下での行政であり、背後には国会という国権の最高機関がある訳であるから、政府からの議決延期請求については 、国会の意思が背後にあることを無視してはいけないのではないかと思う訳である。私はいずれにしても不信とか対立が決定的にならないように次回まで冷却期間をおいた方が良いのではないかというふうに思う。以上である。

 

速水議長 私は第4条の政府との関係について言えば、この間の関僚会議に出席して経企庁の8月の報告と認識を審議して頂いたがほとんど同じことを言っており、変わっているとは思わない。金融政策の決定であるから同じ時期にスタートしなければならないというものでもないし、タイミングが違ったりすることもある。こちらが政策判断としてどれでいくか決定するのは第3条で認められた我々の自主性である。 他にご議論はあるか。

 

-略-

 

速水議長 これ以上議論をしても時間がかかるばかりで結論が出ると思えない。第19条3項にあるように、前項の規定による議決の延期の求めがあった時は、委員会は、議事の議決の例により、その求めについての採否を決定しなければならないから、採決に移りたいと思う。

 

中原委員 一つだけ申し上げたい。慎重を期せば、4~8月のGDPをみて少なくとも2期連続でプラスになったことを確認したうえでもなぜ遅いのかという議論は当然あると思う。私は慎重を期すのであれば第2四半期のQEが出るまで待った方がいいと思う。

 

速水議長 その議論は既にかなり出ている。 採決に移りたいと思う。宜しいですか 。最初に政府から提出された議長案に対する議訣延期の求めについて日銀法第19条3項に基づいてその採否を決定するための採決を行なう。その後、金融市場調節方針に対する議案として、中原委員案、議長案の順で一つずつ採決することとする。ご異議ございませんか。

 

[全委員が賛意を表明]

 

それでは異議がないようなので採決する。政府からの出席の方は別室へお願いする。政策委員会としての議決がなされてからまたお呼びする。

 

[政府からの出席者退室]

 

それでは政府から提出された議長案に対する議決延期の求めを採決する。事務局は正式な議案を持ち回って、委員から決裁を得た後にその結果を報告して下さい。

 

[議決の延期の求めについて事務局より決裁文書を回付、各委員がサイン]

 

議決結果 賛成:中原委員 反対:速水議長 藤原副総裁 山口副総裁 武富委員 三木委員 篠塚委員 植田委員 田谷委員 棄権:なし 欠席:なし

 

 

 

横田政策委員会室長 日本銀行法第19条第2項の規定による議決の延期の求めに関する件についての採決結果を報告する。賛成1、反対8、反対多数で否決された。

 

速水議長 それでは続いて、金融市場調節方針に関する議案を順番に採決する。まず中原委員の議案の採決をお願いする。事務局は正式な議案を持ち回って、委員から決裁を得た後、結果を報告して下さい。

 

[中原委員の議案について 事務局より決裁文書を回付、各委員がサイン]

 

 

議決結果賛成:中原委員 反対:速水議長 藤原副総裁 山口副総裁 武富委員 三木委員 篠塚委員 植田委員 田谷委員 棄権:なし 欠席:なし

 

横田政策委員会室長 中原委員提出の議案についての採決結果を報告する。賛成1、反対 8、反対多数である。

 

速水議長 それではただ今の議案は否決された。次に私の提出した議案について採決する。事務局は正式な議案を持ち回って、委員からの決裁を得た後、その結果を報告して下さい。

 

[議長の議案について事務局より決裁文書を回付、各委員がサイン]

 

 

議決結果 賛成:速水議長 藤原副総裁 山口副総裁 武富委員 三木委員 篠塚委員 田谷委員 反対:中原委員 植田委員 棄権:なし 欠席:なし

 

 

横田政策委員会室長 議長議案の採決結果について報告する。賛成7、反対2、賛成多数である。なお、反対の委員は植田委員、中原委員である。

 

 

速水議長 それでは、7対2の賛成多数で可決された。植田委員と中原委員は反対の理由をもし明確にしておかれたいということであればどうぞ。

 

 

植田委員 名前付きで出るチャンスであるので、極く簡単に三つだけ申し上げる。 第一に、景気情勢等に関する見方には、他の委員と私の間で余り差はない。従って、不謹慎ではあるが、今回の利上げが失敗に終わる確率は非常に低いと思っているし、私の反対が杞憂に終わる可能性は高く、また、そうあって欲しいと願っている。これは反対理由にはならないが。二番目に、そのうえで私は何割かのリスクがあることに配慮した。先程来申し上げているように二点であり、一つはマーケット動向、特に株式市場の動向等についてもう少し見極めても宜しいのではないかという点である。もう一つは、現実の足詳のインフレ率の動向、あるいは推計されるGDPギャッブ等から判断して、適正な金利は漸くゼロ達したかどうか という辺りであるので、もう少しはっきりプラスになるまで待つことにある程度の魅力を感じているという点である。三番目に、そのように待つことのコストが足許のインフレ動向から判断して、それほど大きくないのではないかと思われることである。以上である。

 

速水議長 中原委員、どうぞ。

 

中原委員 (前略)最後に何と言っても一番大きな問題はGDPデフレギャップがかなりある現在、生鮮食品を除くCPIが依然として下落気味である時に利上げをすることは、経済学のオーソドックスな理論に私は反するのではないかと思う。特に最近国際的な学会で日本の経済が随分取り上げられ、日銀の金融政策が分析されている訳であるが、そういった場での世界の経済学者と日銀のやりとりをみるにつけ、これはもしかしたら日本異質論ではなく、日銀異質論と言われかねないと強く懸念している。以上である。

 

-略-

 

山口副総裁 1か月待って欲しいと政府に言われたら、結局待つべきだ、と言っている訳か。

 

中原委員 私は先程議決延期請求に賛成した。

 

山口副総裁 常に政府の方針に従うべきであるということか。

 

中東委員 従うとは言えない。

 

速水議長 独立性ということをいつも随分言われているではないか。それではここで、政府の方に入って頂き先に進みたいと思う。

 

[政府からの出席者入室]

 

政府からの議決延期の求めについては、反対8、賛成1で否決された。中原委員案については反対8、賛成1で否決された。議長案、ゼロ金利解除案であるが、反対2、賛成7で可決された。

 

村田大蔵総括政務次官 ただ今政府による議決延期請求が否決されたと伺い、議決延期請求が否決されたことは誠に残念であるが、日本銀行におかれては今回の決定が回復しつつあるわが国の景気の腰折れや金融・資本市場への悪影響をもたらすことのないよう、新たな金融市場調節方針の下においても、景気や金融・資本市場の動向等を十分に注視しつつ、豊富な資金供給を行なうなど、適切かつ機動的な金融政策運営を続けられることを要望したいと思う。

 

河出経済企画庁調整局長 私共も同じ要請である。お願いする。

 

速水議長 私からも一言申し上げる。本日は政府からの議決延期の求めを否決し、ゼロ金利政策を解除することとなった。ただ本日議論させて頂いたところ、最気の先行きに対する見方や経済政策の基本方針が政府と日本銀行との間で異なっていることはないと思う。繰り返しになるが、今回の措置は経済の改善に応じて、金融緩和の程度を微調整する措置である。従って、金融が大幅に緩和され、景気回復を支援する状態は継続することとなる。この点は政府にもご理解頂けるものと思っている。また(後略)

 

-略-

 

村田大蔵総括政務次官 私共政府側として、本日議決延期請求権を行使した事実とその理由は、本日中に公表せざるを得ないと考えているので、お含み置き願いたい 。

 

-略-

 

速水議長 私共も、本会合終了後30分後にその他の公表文と一緒に公表することとしたい。それではここで、対外公表文の作成をしたい。金融市場調節方針の変更に関する対外公表文の検討および決定に移りたい。まず原案作成のために多少時間を頂きたいと思う。藤原副総裁、山口副総裁と執行部は別室で原案を用意して下さい。その間皆様は自席で10分間お待ち下さい。

 

(午後4時19分中断、午後4時28分再開)

 

速水議長 それでは、金融市場調節方針の変更に関する対外公表文の検討および決定に移りたい。原案の用意ができたようなので、事務局から読み上げてもらう。

 

雨宮企画室企画第1課長「平成12年8月11日。日本銀行。金融市場調節方針の変更について。

 

(1)日本銀行は、本日、政策委員会金融政策決定会合において、金融市場調箭方針を以下のとおりとすることを決定した(賛成多数〉 。無担保コールレート(オーバーナイト物〉 を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。

 

(2)日本銀行は、昨年2月、先行きデフレ圧力が高まる可能性に対処し、景気の悪化に歯止めをかけるためのぎりぎりの措置として、内外に例のない『ゼロ金利政策』を導入した。その後、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢となるまで 『ゼロ金利政策』を継続するとの方針のもとで、この姿勢を維持してきた。

 

(3)その後1年半が経過し、日本経済は、マクロ経済政策からの支援に加え 、世界景気の回復、金融システム不安の後退、情報通信分野での技術革新の進展などを背景に、大きく改善した。現在では、景気は回復傾向が明確になってきており、今後も設備投資を中心に緩やかな回復が続く可能性が高い。そうした情勢のもとで、需要の弱さに由来する物価低下圧力は大きく後退した。このため、日本経済は、かねてより『ゼロ金利政策』 解除の条件としてきた『デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢』に至ったものと考えられる。

 

(4)この間、7月央以降は、いわゆる 『そごう問題』 の影響にも注目してきたが、これまでのところ、この問題を契機として、金融システムに対する懸念が広まったり、市場心理が大きく悪化するといった事態はみられていない。

 

(5)今回の措置は、経済の改善に応じて金融緩和の程度を微調整する措置であり、 長い目でみて経済の持続的な発展に資するという観点から行うものである。今回の措置実施後も、コールレートは0.25%というきわめて低い水準にあり、金融が大幅に緩和された状態は維持される。日本銀行としては、物価の安定を確保するもとで、こうした緩和スタンスを継続することにより、金融面から景気回復を支援していく方針である。以上。」

 

である。

 

速水議長 それでは、意見等があればどなたからでもどうぞ。

 

三木委員 (5)であるが、先程村田大蔵総括政務次官からあったように、政府の経済政策の考え方と整合性を持った形で今後も潤沢な資金を供給して欲しいといった話があった。その辺のところをはっきり書いておかなければいけないのではないか。

 

増渕理事 この最後のパラグラフには、今三木委員が言われた趣旨が入っている積もりだが、もう少し明示的に政府の経済政策も考えながら行なうということを・・・。

 

三木委員 村田大蔵総括政務次官からは、採決後に、議決延期請求は否決になったが、日本銀行としては云々というお話があった訳である。これは非常に大事なことだから必ず入れておかないと、誤解されてしまう。

 

増渕理事 一番最後の辺りに政府の経済政策との整合性を明示するとしてどういう言い方が宜しいのだろうか。

 

-略-

 

三木委員 要するに、議決延期を提案された政府代表の議案が否決され、残念ながらということで再度日銀に対してこういうことを強く要請したいと言われたので、その中身については我々は全く同意見な訳で、それをはっきりと文書で出しておく必要があるという意味である。

 

-略-

 

藤原副総裁 言われていることは分かるが、この金融市場調節方針の変更についての中身は日本銀行が採る政策の説明なので、これはこれで宜しいかと思う。 今言われたようなことは記者会見等で総裁から当然言及されると思うし、日本銀行の政策方針の中に精神は入っても、文字としてはここに巧く入らないような気もするので、気持ちを他のオケージョンで表明することではどうだろうか。

 

三木委員 駄目だね。今回これだけのことをしている訳である。本行の政策方針はこの1ページに尽くされている。

 

-略-

 

三木委員 反対である。今一番大事なのは政府との真っ向対立となっている結論を公表文で外へ出すことなので、きちんとすべきである。それぞれ政府の方も意見を述べる場があって、その意見を踏まえてのことである。中原委員の話ではないが、そんな生ぬるいことを考えては駄目である。記者会見では言わざるを得ないと言っているのに、なぜ書いて悪いのか。ディレクティブの中に入れる訳ではない。公表文の一番最後に、政府もそう言っているし、我々の方もそこはきちっと行なうということを書いて安心してもらうような表現にする訳である。だからそこを書きなさいと言っている。言わないのなら別であるが、記者会見で言おうとしている位なら書けば良い。何をこだわっているんだ。

 

-略-

 

山口副総裁 私は三木委員とは原則的な考え方が違うが、そこまで言われるのであれば(6)を設けてはどうか。そこで、政府代表から表明されたことに触れてはどうか。

 

-略-

 

武富委員 三木委員が言われてることを表わすのは、例えば、この一番最後の行の 「金融面から」 の前に「政府とともに」あるいは 「財政とともに、金融面からも」とすることでは足りないか。

 

-略-

 

田谷委員 それは(5)の後ろか、(6)か。例えば最後の文章にもう一つ付け加えて、「こうした方針は政府の景気支援方針と整合的であると考える。」とするのか。

 

三木委員 「であると考える」というのはこっちの一方的な意思だ。

 

田谷委員 ただ 「要請」は書けないと思う。

 

三木委員 要請が難しいのだったら、整合性を念頭に置きつつとか何か巧い表現があるだろう。

 

雨宮企画室企画第1課長 今の田谷委員とほとんど同じだが、景気というよりもう少し全般的な経済政策ということで、その(5)の 「金融面からの景気回復を支援していく方針である。」の文章に続けて、「こうした考え方は政府の経済政策運営の基本方針とも整合的であると考える。」というような表現を付け加えるというのではいかがか。

 

村田大蔵総括政務次官 そうすると、何で私共が議決延期請求を出したのかという問題を誘発する。ベクトルが同じでも多少違う訳である。

 

雨宮企画室企画第1課長 基本方針ということで三木委員が言われたベクトルという感じを出すということである。 要するに、景気対策とか景気政策とかの考え方を「経済政策運営の基本方針」という格好でそのベクトルのイメージを取り敢えず出す訳である。そして、「考える」という意味では日本銀行が考えているということである。

 

山口副総裁 いつか似たような表現を使ったことがある。

 

雨宮企画室企画第1課長 9月21日の会合で、大きな議論になった際、最後に纏まった表現がこれである。正確な文章は覚えていないが、「こうした考え方は政府の為替政策運営の基本的な考え方と整合的であると考える」といったように、考えるという方針は、日本銀行が考えるということで宜しいとなった経緯がある。

 

三木委員 それを念頭に置いて言っている。

 

河出経済企画庁調整局長 私が申し上げるのもどうかと思うが、緩和スタンスの例示に私共が要請したようなことを書いて頂ければ、私共がこういう要請をしたことも受けて緩和スタンスになっているという当方の説明材料になる。

 

藤原副総裁 豊富で弾力的なといった文言か。

 

河出経済企画庁調整局長 金融なり経済動向に応じて弾力的な資金供給を行なう等といったことを緩和スタンスの例示にして頂ければ、私共が要請したことも受けてこうなっているとして、当方も説明しやすいと思う。

 

田谷委員 ただ、「豊富で弾力的」 とは言えない。

 

増渕理事 先程話を聞いていたところでは、「豊富で弾力的」とは言われなかった。「適切かつ機動的」だったか。

 

村田大蔵総括政務次官 適切かつ機動的な緩和スタンスという政策運営を続けられることを要請すると言った。

 

雨宮企画室企画第1課長 日本銀行としては物価の安定を確保する下で 。

 

河出経済企画庁調整局長 金融為替市場の動向も注意しつつというのもできれば入れて頂きたい。

 

増渕理事 余りにも政府の表現と一緒になると。

 

速水議長 「日本銀行としては物価の安定を確保する下で」のその次に入れるのか。

 

増渕理事 数分頂きたい。

 

雨宮企画室企画第1課長 事務局の案を読み上げる。(5)の第2パラグラフから読む。「今回の措置実施後もコールレートは0. 25 %というきわめて低い水準にあり、金融が大幅に緩和された状態は維持される。日本銀行としては、物価の安定を確保するもとで、適切かつ機動的な金融政策運営を継続することにより、 金融面から景気回復を支援していく方針である。」。

 

-略-

 

雨宮企画室企画第1課長 ではもう一度読む。今度は下から3行目の日本銀行としては、から読む。宜しいか。「日本銀行としては、物価の安定を確保するもとで、適切かつ機動的な金融政策運営を継続することにより、景気回復を支援していく方針である。」

 

三木委員 結構である。

 

速水議長 他、特にないか。ではこれで決定する。

 

-略-

 

速水議長 最後に一つだけ申し上げておきたい。決定会合の摸様は本当にここに居る人しか分からない訳であるが、この模様を報道したものについて若干報告したい。共同通信の報道で一つは4時1分に 「16:01 速水日銀総裁、決定会合にゼ口金利解除を提案 (了)」、それから4時46分に「日銀総裁が解除案提出 、政府は議決延期請求権を行使。関係筋によると、日銀の速水優総裁は11日の金融政策決定会合でゼロ金利政策の解除を提案し、会議に出席している政府の代表は議決の先送りを求める議決延期請求権を行使した模様だ。」とある。情報の出所はなお不明確であるが、こういうのが出るというのは極めて遺憾な事態だと思う。本件については状況把握にもう少し努めてみたいと思っているが、ここで改めて本日の決定内容は会合終了後の公表において初めて対外公表されるものであること、それまでの間は情報管理を厳しく堅固に実施して頂きたいことを改めて確認させて頂く。政府代表の方々も宜しくお願いする。

 

どうも長時間ご苦労様でした。閉会に致します。

 

(午後5時18分 閉会)